Q&A

・透明標本に気泡が入っている場合
 これは気温の暖かいところから、寒いところに移動した場合
 瓶の中の気圧が陰圧になるため、保存液中の空気が気泡として出現します。
 このような場合は、一度瓶のふたを開けて気圧を正常にして
 室温でおいておけば気泡はなくなります。
 寒い時期の輸送中にたまに起こるトラブルですが心配ありません。

 しかし、標本作成中に入ってしまった気泡は取り除くのが面倒です
 私の作る標本には完成時にはすべて気泡を抜いたものしかお譲りしていませんので
 まずその心配はありませんが、ご自身で作成される場合はご注意ください。

・透明標本の保存方法は
 可能であれば冷蔵庫に入れておくのが一番長持ちすると思います。
 が、それではせっかくの鑑賞が楽しめませんので普通にお部屋に飾っていても大丈夫だと思います。
 ただ私もどれほど長持ちするか分からないのが正直なところです。
 ちなみに私が昔作った標本は部屋に置いたままで12年ほど経ちますがまだまだ大丈夫のようです。
 ただ長年保存していると保存液が黄ばんでくることもありますので
 気になるようであれば新しいグリセリンと交換してください(上記の12年ものも1度だけ交換しました)。
 グリセリンは薬局で購入できますので、ご自身で交換されても問題ありません。

・機材・薬品などの入手方法
 すべてインターネットから購入可能です。
 個人の購入者であっても、登録申請すれば問題なく入手できますよ。
 詳しくはお近くの薬剤店などにお問い合わせしても良いかもしれませんね。

キシレンの使用について
 廃液の処理と、手間にすごく時間がかかるので一般の方にはお勧めできません。
 脂分の除去にキシレンは必要なものだと思っていますが
 個人の方には、そこまでリスクを負ってするほどではありませんので
 趣味の範囲での作成であれば、キシレン使用は必要ありません。
 ただ大型のものはキシレンを使ったほうが無難です(10cm以上の生物)

 ちなみに私は大小かまわずすべての標本に、キシレン処理をして標本作成しています。

・トリプシンなどの蛋白分解酵素について
 酵素の使用については、こちらもそれほど重要ではないと思っています。
 最近の論文では、酵素を使わない透明標本の作成方法も紹介されており
 私もその考えでいます。
 酵素はたんぱく質を分解するのですが私の感覚では、
 ただ単にたんぱく質が腐るのを手伝っているだけのように思えます。
 結局は水酸化カリウム溶液だけで透明になるんですね。
 でも私はトリプシンを使いますけどね。

・オキシドールについて
 こちらもあまり重要ではないでしょう
 脱色が目的なら、水酸化カリウム溶液につけたり、紫外線照射の方が便利です
 オキシドールのデメリットは多く、ヒレが溶けたり、体内に気泡が出来たりと良いことありません。
 しかし経験をつんで使えばメリットも多いので、私はオキシドールを使っています。

・作成時間について
 3cmくらいのものなら、2-3ヶ月程度でしょう。
 もちろん採集して、ホルマリン固定後から完成に至るまでの時間です。
 簡単にやれば1ヶ月かかりませんが、なるべくゆっくり時間をかけてやるときれいに出来ます。
 私は自分の趣味でやっていますので時間に追われることはなく
 暇が出来たときに作業を進めるようにしていますので
 半年以上時間をかけて仕上がるなんて普通のことで
 時間のかかるものは2年越しというのもあります。
 それがかえって、きれいな標本になる要因なのかもしれません。

 (グリセリンに入れたまま数ヶ月放置なんてことも多々あります)

・カニの標本
 カニ(磯ガニのようなその辺にいるやつ)の標本は殻が厚いので
 透明にするのに時間がかかります。小型のものなら意外と速く出来ます。
 ちなみに今サワガニの成体、甲幅2-3センチくらいについて実験中です。
 幼体や殻の薄い深海性のカニは意外と簡単に透明になりますよ!
 エビは簡単ですが脚が取れやすいので難しいですね。
 例えばザリガニは脚がすぐに取れてしまい体だけになってしまいます。
 これらはじっくり慎重に作る必要があるので、かなり面倒な作業になってしまいます。

・標本の入手方法
 珍しい魚については、なかなか入手出来ないのが現実です。
 実際には私の仕事柄、かなりレアなホルマリン標本は沢山ありますが
 これは仕事や研究などいろいろな事情で公に出来ないものばかりです。

 今後も普通にいるけど珍しいものを探して標本を集めたいと思っていますので
 魚屋さんや、市場めぐりは重要ですね。
 それと自分で捕まえたり、熱帯魚を購入したりとサンプル収集をしています。
 またペットショップの死んでしまった両生類や爬虫類を譲っていただけましたので
 これらはどのような結果になるか実験中です。

 エサ用の冷凍マウスと冷凍ウズラが手に入りましたので
 これらについても色々と実験しているところですが
 魚などとはまったく別の方法が必要な部分もあります。

・最後に
 色々と書きましたが、結局のところマニュアル通りに作ることをお勧めします。
 もちろん自分なりの方法を探すのも良いですが
 大変な苦労をしますのでおすすめしません(私は苦労してます・・・)

 難しく考えずにじっくり作るのが一番綺麗に出来ると思います。
 私もそのようにやっているつもりです。

 私にとっての透明標本は化学実験のように厳密なものではないので
 試薬の濃度や分量はアバウトです。ほとんど目視です、
 ハカリやメスシリンダーなど最近は使わないようになりました。
 標本の大きさはもとより、種類によっても異なるので
 重要なのは見た目で判断できる経験だと思います。
 思い切って挑戦してみてください。

以上になりますが、
それではまた今後ともどうぞよろしくお願いします。

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