作り方

ネット検索すればたくさんの作り方が紹介されています。
人それぞれ手法や薬品が微妙に違ったりしていますが
それは皆さんいろいろ経験をされて自分なりに良い方法を見つけているのだと思います。
保存の状態や魚種によって違ってきますので、なかなか一概には言えないのですが
何事も挑戦と経験で学んでいくことが多いものです。

私もいろいろなやり方を実験してみましたが
皆さんも是非自分の方法を探し出してみてください。

ここではいたってシンプルな作り方を紹介していますので
これを元にいろいろと模索していただければと思います。

@透明標本にしたい魚をホルマリン5-10%に保存します(10-30日)
 ホルマリン固定後、皮をはいだり、ウロコの除去をしておくと良いです

A水でホルマリンを抜く(1日)

B軟骨染色:アルシアンブルーで染色(時間はお好みの色になるまで)

アルシアンブルーは高価ですが、ケチらずドバっといきましょう!
難しい分量を量るより、はじめから染色液として売っていますので
それが便利だと思います。


↑青く染色後、しばらく水にさらして余分な染色液を抜き取ります。
 染色具合は上のような色合いで十分でしょう。
 生物の種類によっては、まったく染まらないものもあります。

Cたんぱく質分解酵素(トリプシン)で筋肉を溶かす(保存液が黒く濁るたびに数回交換)
 温度は30-35度がベストです。

D硬骨染色:アリザリンレッドで染色(時間はお好みの色になるまで)

E1-5%水酸化カリウム1-5%で脱色
 

F100%グリセリンへ徐々に置換していく

上の写真では4本ですが、実際は徐々に濃度の濃い瓶に交換していきますので
わたしは10段階以上に分けて進めていきます。
特に仕上げの100%にするまでは慎重です。

G防腐剤を少量入れて完成です
 お好みの小瓶に入れてもらえれば出来上がりです。
 小瓶は東急ハンズなどで購入できますよ。
 試験管に入れてもいいですね。

お疲れ様でした。
おおよそですが、
3センチぐらいの個体で3〜5ヶ月
6センチぐらいの個体で6〜8ヶ月
それ以上は 半〜1年以上作成日時がかかります。

大型個体(10p以上)に挑戦される方は、脂肪分が透明標本作製に邪魔になりますので
アセトンやキシレンなどの有機溶媒で一度置換処理されることをお勧めします。
脱脂しておくことで非常にきれいな透明度の高い標本が作成できますよ!
ちなみに私の標本作製は大きくても小さくてもすべての個体で必ず脱脂作業をしています
これが透明標本をきれいに作るコツだと思います!
(秘密のレシピを教えてしまいましたが是非参考に作ってみてください)

↑ホルマリン保存から、キシレンまで置換するのに10段階くらいかかります
 またその後、キシレンから染色するまで10段階くらい必要です。
 私はこの置換する期間だけで1〜2ヶ月以上かけてゆっくり行います。

最後に
透明標本を作るには、その生物にあった保存方法というのがあって
スーパーで売られた状態では、確率でいえば自分の理想の半分以下のものしかできません
それは状態のよいものを入手しにくいという点が一番ですね
簡単な例でいえば
標本用に1匹ずつ丁寧に採集して、保存したものと
大きな網で食用に採集したものでは痛み具合が全く違います。
(冷蔵でも魚の内臓はすぐに傷んでしまいますからね)

他にもいろいろと理由があって保存するまでの過程の違いが標本作製に影響します。
より良いものを作るにはその過程が重要なんですね。
透明標本を見て、もっとこうだったらいいのになぁ〜と思うところは
ほとんどその採集方法と保存方法が原因と思います。
透明標本を作る薬品の過程は、レシピに従えばある程度誰がやっても
同じものができますが、標本の元となる生物は現場に出かけて自分自身の
努力と経験あと人脈でしか入手できないものも多数ありますからね。

私自身もこの保存するまでの過程にこだわっていて
ほとんどのものは、自宅まで生きた状態で丁寧に持ち帰り
色々な過程を経て保存するような方法を確立しています。
だから一度に多数処理することができないので、私の扱うサンプル数には限りがあって少ないのです。
(本来は自分のコレクション用にやっていることなので十分です)
私の標本を見ていただけると、どれもヒレピンのものばかりと思います。
完全な状態を理想として作成しています。




ちなみに標本の作製についてはさまざまな文献や図鑑に詳しく解説されていて
この生物は睡眠薬を使うとよいとか、二酸化炭素がよいとか、前処理の方法とか
どの薬品を使うかなど紹介されていますので一度お調べになると参考になるでしょう。

あと生命に対する尊厳も大切ですね
普段食べるお肉や魚も、誰かがさばいて私たちの手元に届いています。
何気なく食べていますが、その尊い命を奪う瞬間を経験していないと
そのもの自体のありがたさというのはあまり感じられないんですよね。
自分自身で生きた鳥や魚をさばくことを考えれば、そのもの自体を大切する心が生まれますよね。
標本も同じで、自分で奪い取った命であれば、それは大切に扱おうと思いますから
標本自体や処理過程をないがしろにはできないです。
その結果として良い標本が作れるのだと思います。

私もそうですが、命を扱うことですから機械的に処理できない
感情というかそういったものが、小さな透明標本には込められているのではないでしょうか。

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